石川県の相続税専門税理士
金沢市、野々市市、白山市、小松市を中心に活動しています!
ブログをお読みいただき、ありがとうございます。
数回に分けて、確定申告に焦点をあてて、さまざまな項目を紹介しています。
今回は、相続で取得した財産を譲渡した場合に受けられる特例を紹介いたします。
☆ 相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合に、
相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例です。
☆ 譲渡所得の計算方法
総収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 )= 譲渡所得
例) 鈴木 一郎さん … 相続した財産の課税価格の合計 3,000万円
そのうち、譲渡した土地の課税価格 1,000万円
相続計算時に受けた債務控除額 200万円
一郎さんが納めた相続税額 900万円
取得費とは、譲渡した土地を購入したときの金額です。
鈴木さんの場合、取得費に加算できる相続税の額は、
900万円 × 1,000万円 / ( 3,000万円+200万円 )= 281.25万円 となります。
※平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得した財産を譲渡した場合の計算式です。
取得費に加算する相続税額 > この特例を適用しないで計算した譲渡益の金額
となる場合は、譲渡益相当額を限度として 相続税額を取得費に加算します。
〔 要 件 〕
・ 相続や遺贈により財産を取得した者であること
・ 財産を取得した人に相続税が課税されていること
・ その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後
3年を経過する日までに譲渡していること
☆ 不動産を譲渡するタイミングについて
将来、相続財産となるかもしれない財産のなかに不動産が含まれている場合、
譲渡するのは、相続開始前 と 相続開始後 のどちらが有利でしょうか。
ケース別に考えてみたいと思います。
〔 相続開始前に譲渡したケース 〕
◎ メリット
遺産分割協議がスムーズに進みます。
生前に不動産を譲渡すると、不動産が現金に代わります。
相続が発生し、遺産分割協議をする際、不動産は分けるのが困難であるため、
しばしば トラブルの原因になります。
でも、現金であれば、スムーズに分割がすすみます。
◎ デメリット
相続税の負担が高くなります。
例えば、土地の場合、相続税評価額は、売買価額の7~8割です。
土地の上にアパート等の賃貸物件が建っていれば、貸家建付地として更に約2割減額できます。
家屋の場合、相続税評価額は、売買価額の6割です。
アパート等であれば、貸家として更に3割減額できます。
現金は、額面どおりに評価されることになります。
不動産を生前に売却した場合、入ってきた現金を生前贈与することも
あわせて考えるとよいかと思います。
現金化したことで、贈与がしやすくなります。
〔 相続開始後に譲渡したケース 〕
☆ メリット
相続税額を抑えることができます。
上記で紹介したとおり、相続財産を不動産で所有していた場合には、
現金で所有しているときよりも 相続税額が下がります。
また、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後
3年を経過する日までにその不動産を譲渡したときは、
相続税額のうち一定金額を譲渡所得の取得費に加算できます。
☆ デメリット
共有で分割した場合、売却が困難になるかもしれません。
不動産を分割する場合は、その分割方法について親族間で
トラブルが発生する可能性があります。
また、もし、その不動産を親族の共有とすることになったときは、売却を考えた場合、
共有者全員の合意が必要となるため、売却自体が困難になるかもしれません。