20年以上連れ添った夫婦間での自宅の贈与は、”遺産の先渡し”には該当しないこととなりました。
〔 これまでの取り扱い 〕
配偶者の優遇措置として、「 居住用不動産 贈与税の非課税制度 」を利用する方が
たくさんおられます。
※ 居住用不動産 贈与税の非課税制度とは
婚姻期間が20年以上の夫婦のあいだで、
① 居住用不動産 や
② 居住用不動産を取得するための金銭 を 贈与した場合、
110万円 ( 贈与税の基礎控除額 )+ 2,000万円 までの
贈与税が非課税となる制度です。
相続税法上、
相続開始前3年以内に 被相続人から贈与があった場合は、
相続財産に加算しなければなりません。
しかし、上記の「 居住用不動産 贈与税の非課税制度 」を利用した贈与は、
贈与から3年以内に相続が発生しても 相続財産に加算する必要はありません。
しかし、民法上、
「 居住用不動産 贈与税の非課税制度 」を適用した場合、
その贈与分は、” 遺産の先渡し ” とされてきました。
相続税の計算上は 非課税となりますが、
遺産分割をする際は、相続時の財産から ”配偶者から受けた贈与分” を差し引いて
相続することになります。
" 遺産の先渡し” = 特別受益 という言い方をしたりします。
民法では、相続税法のように相続開始前3年以内の贈与のみ加算するのではなく、
数十年も前の贈与であっても、遺産の先渡しとなります。
民法で、遺産の先渡しとされるのは、
例えば、
◇ 結婚資金の贈与
◇ 開業資金の贈与 ほか 一定の場合です。
〔 問題点 〕
夫の相続時、妻は、少額の財産しか相続することができず、将来の生活に不安を感じるでしょう。
長年連れ添った夫婦の場合、夫は妻の老後を心配し、自宅を贈与しているケースが多いのでは
ないでしょうか。
自宅を贈与したことによって、妻が結果的に わずかな財産しか相続できないことになれば、
夫が贈与を行った思いが、遺産分割に反映されない結果となってしまいます。
※ 補足
夫が「 妻に贈与した自宅部分を遺産分割に含めなくてよい。」という
意思表示をしていた場合は、贈与分を考慮せずに遺産分割を行うことができます。
〔 改正後は 〕
婚姻期間が20年以上である妻(配偶者)に自宅を贈与(または遺贈)したケースで一定の場合、
” 遺産の先渡し ” とは捉えず、遺産分割が行えるようになりました。
→ 妻がより多くの財産を相続することができることにより、
夫が生前に行った贈与の趣旨が、遺産分割にも反映されることになります。
☆ 注意点
遺留分を計算する場合には、贈与税の配偶者控除分を含めて
遺留分の侵害額を算定することになりますので、注意が必要です。
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