遺留分を侵害されたら”金銭”で請求できることになりました。
会社の経営者である父親が、長男に経営をまかせたい という思いで
“経営する会社の土地建物を長男に相続させ、預金は二男に相続させる” という遺言を
残していました。
相続人は、長男と二男の2名です。
◇ 父親の相続財産
経営している会社の土地建物 2億円 → 長男へ
預金 4,000万円 → 二男へ
→ 長男と二男の法定相続分は、同じく1/2ずつです。
二男は、遺言書どおりに相続することは、不公平であることから
長男に対し、遺留分の減殺請求を行いました。
※ 遺留分とは
遺留分とは、法定相続人に認められている、最低限の遺産の取り分のことをいいます。
遺留分が認められるのは、配偶者、子や孫(代襲相続人)、親や祖父母です。
兄弟姉妹には認められていません。
認められている遺留分は、法定相続分の1/2です。
親や祖父母のみが相続人になるケースでは、法定相続分の1/3となります。
※ 遺留分の減殺請求とは
遺言のなかに、相続人間で不公平な内容が書かれている場合に、
相続人が他方の相続人に、
「自分に認められている遺留分の取得」を主張し、
遺留分に達するまでの財産を請求する手続です。
◎ 上記のケースで、二男が遺留分を侵害された金額は、2,000万円
〔 計算式 〕
会社の土地建物 2億円 + 預金 4,000万円 = 2億4,000万円
2億4,000万円 × 1/2(法定相続分) × 1/2(二男の遺留分) = 6,000万円
6,000万円 - 4,000万円(二男が取得した預金) = 2,000万円
→ 二男は、長男に対し、2,000万円相当額を要求
〔 これまでの取り扱い 〕
二男が、長男に対し、遺留分の減殺請求をしたことにより、
会社の土地建物は、長男と二男の共有となります。
それぞれの持分は
長男 : 1億8,000万円 / 2億円
二男 : 2,000万円 / 2億円 となります。
〔 問題点 〕
会社の土地建物が長男と二男の共有状態となることで
会社の事業承継がスムーズに進まないことが予想されます。
共有となる持分の金額が複雑な分数になる可能性があり、
長男から二男へ持分を移すことが困難となる状況が考えられます。
〔 改正後は 〕
二男が長男に対して、遺留分の減殺請求をした場合、
長男は、二男に“金銭”で相当額を支払うことが必要となりました。
“モノ”ではなく、“お金”で支払うことになったことで、
相続財産が複雑な共有状態になることを避けることができます。
そして、
遺言を残した被相続人の意思も尊重されることになります。
この改正により、親から子への事業承継がスムーズに進むのでは、と
期待されます。
〔 注意点 〕
遺言により遺留分を侵害することがわかっている場合、
侵害している金額は、今後、金銭で支払うことが必要になります。
あらかじめ必要な金銭の用意をしたうえで、遺言書を作成する等
注意が必要になるかもしれません。
税理士法人みらいサクシード
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